「足跡なき追跡者・ひとみ」
──夜のカラーシング。
静寂を破るように、ひとりの男が枠を渡り歩いていた。
「よし、まずは会長のゆうくんの枠だな…。」
軽快にコメントを飛ばす男。名は──なかじ。
通称・寝落ち探偵。
今日も事件なき配信界を漂っていた。
しかし、その平穏は長くは続かなかった。
しばらくすると、
コメント欄に見慣れた名前が光る。

「……ひとみさん?」
彼女はやさしい声で言った。
「応援に来たよ〜✨」
その瞬間、なかじの勘が働いた。
胸の奥に、微かなざわめき。
──何かが起きている。
ゆうくん枠を後にしたなかじは、
次の目的地「にゃむさん枠」へ向かう。
軽く挨拶をし、空気を読んでコメントを投げる。
穏やかな時間。
……の、はずだった。

「あれ? また……ひとみさん?」
そこに再び現れた彼女。
タイミングは完璧、まるで尾行。
「ま、まさか……つけられてる?」
だがカラーシングには、足跡機能が存在しない。
誰がどこに行ったかなど、知る術はないはず……。
──にもかかわらず、彼女は必ず現れる。
ゆうくん枠、にゃむ枠、そして次の行き先にも。
これは偶然か?
それとも──「必然」か?
「ふっ……面白くなってきたじゃないか。」
夜の配信アプリにひとり呟くなかじ探偵。
チャット欄に流れるスタンプの海の中、
新たな謎が静かに光った。
🕵️♂️ つづく──『File No.002:三度現るひとみ』